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業界情報第2回……書店から見た本の時代とは




 どのような本がロングセラー化して、10年後、20年後に残っているのだろうか――この情報化時代に――
 現在、書籍の定価問題が話題になっている。本は安過ぎるので、高定価にしようと、また、いや多くの読者に読んで貰うために安い定価のままで読者へ、という議論がある。本に関しては、値付けは出版社の勝手である。売れなければ自己責任で倒産もある。著者も出版社も、多くの人達に読んで貰いたい思いは同じである。買う人は安いほうがよい。書籍の値段が5,000円でも10,000円でも、10〜20年後までいとおしい本であれば、持つことにより心を豊かにする。そのような本であれば、安い買い物である。当然死ぬまでのお付き合い。本人がこの世から去れば、本だけが残される。遺族にとってはゴミでしかない。本当にむずかしい本の値づけである。生きているうちにたくさん読みましょう。
 本の値段とかかわりのあることに、電子ブックのことがある。日本でも、電子ブックは辞書などを中心として、普及はしているが、まだ市場としては成り立っていない。
 ‘07年11月にアマゾンより「キャンドル」が発売された。評判はよいそうだ。本や新聞、雑誌が10数秒でダウンロードできるらしい。もちろん有料であるが安い。著作権が切れた本など、タダ同然で購入できる。画面も印刷に近い状態らしい。電子ブックなら、本棚から抜き出す手間も省ける。頁の必要部分を探し出す手間もない。簡単にファイルできる。本を探す老人はその手間が必要だという人もいるだろうが、若い人の脳構造では、その手間がやっかいだと思う人も多い。音楽の配信はすごい。本もその段階に近づいてくるだろう。ふと、書店の未来はと、考えざるを得ない。
「らしい」が多いのは、私が情報で得た知識しかないからで、お許しください。電子ブックはサワッタことはあります。
 「文学界」3月号、特集−小林秀雄、没後四半世紀−を読んでいて、本棚より関連の本を取り出して読む。ふと、電子ブックではこの感覚はない、と思う。本を手に取ることによって、その本の広範な記憶がバックに広がり、それを通して、必要部分を読む――この作業は、まだ電子ブックでは無理があると思う。今、見開いているページは、「論座」の新文庫主義のページである。題目の横に、−歴史の必然に爪を立てる−写真が貼ってあり、「考えるヒント」Bが見える。330〜331ページを見開き、右上、左下などちらちらと見ながら、昨日読んだ橋本治著の『小林秀雄の恵み』を考えている。この楽しさは、紙がないと味わえないことのように思う。
 本式に「キャンドルストア」が普及し、自宅にCPUもが置いてある時代になれば、この、紙の感触も「電子ブック進化型」に取って代わり、違った楽しい感性が発生する脳になっているかもしれないと思うが。
 私が生きている時代、書店は限らず残っている。その店舗数、内容はわからないが、まだまだ活字文化はすたれない。


・ 「文学界」2008年3月号 文藝春秋 \905+税
・ 『小林秀雄の恵み』橋本治著 新潮社 \1,800+税<
・ 『本居宣長 上・下』小林秀雄著 新潮文庫 上下各\700+税